2001年 娘と行く一泊二日の、キャンプ・ツーリング

2001923日(日曜日)晴れ

 

630分に目が覚めた。今日から沙若(サワカ)と一泊のキャンプ・ツーリングに行く。

今回初めて連れて行くことになり、いつもと違う期待感がある。                                                                            

前日から準備は整っているが、荷物の積載方法で昨日よりいい方法を思い付きもう一度試してみる。昨日より更に安定したみたいだ。

後は朝飯を食べて出発するだけだ。

沙若も7時には起きてきて、昨日買ったGジャンを着せてみる。ファッションも完璧だ。

事故の無いよう、テレビ番組「おじゃ魔女ドレミ」の中の呪文を沙若にしてもらう。

今日から二日間のもう一人の相棒は、三日前に買ったKDX125SR。

2ストローク単機筒エンジン、22馬力を発生するオフロードバイクだ。

車体も乾燥重量105kgと軽く、沙若とダンデムしても不安は感じられない。

今回は、沙若の希望で南阿蘇、高森にある大きなブランコが目印の「鍋の平キャンプ場」まで行こうと思っている。

だが、そこまでのルートは何も決めていない。時間を見ながら決めることにしよう。

 

食事も済まし、家族みんなに見送られて820分に出発。

200号腺バイパスから県道22号線をぬけ添田町へ向かう。ツーリングで行き慣れた道だ。

沙若はしっかりと掴まり、時折ヘルメット越しに話かけてくる。風の音で聞き取りにくいので、

お互い大きな声で話す。これもダンデムの楽しさか。

彦山駅の手前まで来た時、沙若が眠そうなのに気が付く。自動販売機がある所まで走り

そこで休憩する。50km程走ったのでペース的には、まあまあだろう。

沙若はジュースを俺はお茶を飲む。一人だと休憩も5分くらいだが、沙若といるせいか、

つい長くなる。これもまた楽しい。

 

ここから彦山の方に行くと林道がいくつかある。沙若に「がたぼこ道を通って山の上に行こう」と言うと、

不安そうな顔をしたが頷いてくれた。地図を見て比較的楽な林道を選ぶ。

KDXは購入後に満タンにしてから現在まで100kmほど走っている。燃費も残量も分からないので、

この辺りで腹いっぱい飲ませてやらないと林道でガス欠という最悪の心配もある。

近くの商店に入り一番近いスタンドを聞くと、少し戻った所にあると言う。

沙若のジュースを飲み終わるのを待って出発する。2kmほど戻った所にスタンドがあり、5.4L入った。

燃費は21km/Lのようだ。こいつのタンクは9Lくらいと聞いていたので、

150kmくらいは満タンで走れると確信した。

スタンドを勢い良く飛び出し、いざ林道へ向かう。沙若が林道走行を、どう感じるのか楽しみだ。

R500に出る。いつもなら小石原の方に行くのだが、今日は英彦山に向かってどんどん登っていく。

KDXもギヤを一つ二つ落しながらでも、重たい荷物と俺達2人を乗せ勢い良く走っていく。

野峠まで来るとトイレがあった。KDXを止め、沙若にトイレに行かなくてよいか聞く。「大丈夫」と返事したので、ここで少し景色を眺める。

すると、近くにいた初老の男性が話かけてきた。その人は筑豊ナンバーのアメリカンバイクに乗ってきていた。

沙若を見て、孫と同じ歳くらいだと言う。

俺達をとても羨ましがっていた。きっとこの人も、かわいい孫を後ろに乗っけて走ってみたいのだろう。

俺達が行く時、沙若に「しっかりお父さんに掴まっていけよ」と言って見送ってくれた。

しばらく行って「相ノ原毛谷村林道」に入る。石の多い林道でフロントをとられないよう、ついつい腕に力が入る。

ギヤは1速か2速までしか上げられずスピードメーターは5〜10kmをうろうろしている。

8kmくらいのこの林道を無事に脱出できるのか、気が引き締まる。途中材木が伐採されている所があり、

そこから見る景色がとても良かったので休憩する。写真も何枚か撮る。

沙若はこんな道の走行は初めてなので、とてもビックリしている様子だ。不安気な顔で「あと、どれくらいあるの?」と聞いてくる。

急がずゆっくり行こうと言ってまた走り出す。

途中でアフリカツイン2台と250ccのオフロードバイクの3人組みに会う。

彼らは林道走行にかなり慣れているようで、軽快に走っていった。

結局8kmのこの林道を抜け出るのに3回の休憩を取るが、転倒もせず無事に走り抜ける事ができた。

舗装道に出るとKDXはまた快調に走り出した。



R212に出て、日田方面に向けて走り出す。ちょうど昼になったので、山国の道の駅で食事を摂る事にする。

せっかくここまで来たのだからと、沙若に食べたい物何でもいいと、つい甘やかす。

しかし、かけうどんが良いと思いがけない答えが返ってくる。俺は地鶏そばを注文する。普段そばは食べないのだが、

以前耶馬溪で食べたそばが美味かった事を思い出し、注文してみた。

注文が来るまでの間、沙若に感想を聞く。楽しいと目を輝かすが、ただ林道は嫌だと顔を曇らす。

そんなに不安にさせていたのかと反省し、この先林道は走らないと約束する。       

また、ここまでの走行で時々眠そうな様子だったので、眠い時はすぐ知らせるよう言い聞かす。

ちょうど客の多い時間帯だったので、注文の品が来るまで少し時間がかかる。

待たされたせいか、うどんもそばもおいしく、俺も沙若もかなり満足した。

腹ごしらえも済み、再度R212を日田に向けて出発する。

快調に走り出してすぐに沙若が眠そうなのに気付き、

路肩にバイクを止めて休憩する。お腹がいっぱいになり睡魔が襲うようだ。

結局日田のR212とR210の交わるところまでに、

3回の休憩をすることになった。

3回目の休憩場所で、沙若は好物のポカリスエットを飲んだ。

しばらく休憩して、眠気が吹っ飛んだのを確認してから、

212を阿蘇方面に向けて走り出した。

緩やかな上り道だが、KDXは快調に走っていく。

全くパワー不足は感じない走りだ。

そのうちに杖立の手前から渋滞が続き、これまで快調に走っていたKDXが停車中に2回ほどエンストした。

その度にキックでエンジンをかける。ガス欠なのかオーバーヒートなのか不安がよぎる。

トリップメーターも先ほど満タンにしてから100km以上を走っている。

とりあえずフェールコックをリザーブにした。早目にスタンドに行くほうがいいようだ。

しかし、渋滞を抜けると再び快調に走り出したので、このまま一気に小国まで行く。

やっと小国道の駅に着き休憩と給油をする。給油している間、子連れのライダーはやはり珍しいのかスタンドの店員が沙若を見て、子供用のヘルメットですか?と、聞いてきた。

実は嫁さんが使っているSサイズのメットなのだが…。これでも沙若にとっては少し大きいが、

走っていて問題は無い。店員と軽い会話を交わした後、休憩することにした。

小国のアイスクリームは美味しいと聞いていたので、沙若に食べさせてあげたいと考えていた。

が、カキ氷の方がいいと言うではないか。

どうして、ここまで来てどこでも食べられるカキ氷なのかと思ったが、

沙若にとっては関係ないようだ。結局メロン味のカキ氷を食べ終わるまで休憩する。

ここからは、いつものように大観峰を目指して走り出す。

BMWで来るときは、ほとんどトップギヤで走っていくのだが、KDX125cc

ちょっとした坂道もギヤを1つ2つと落としながら、けたたましい音を立てて走る。

久々のシフトチェンジがとても楽しい。

大観峰に着いたら凄いオートバイの数だった。そこに125ccの子連れが入り込む。内心「どうだ、凄いだろう!羨ましいだろう!!」と言いながら・・・。実際に、いく人かの熱い視線を感じる。

バイクを止めた後、カメラを持って遊歩道を更に10分くらい登っていく。眼下に阿蘇の雄大なパノラマが広がっている。

この景色をバックに沙若と写真を撮る。ちょうどパラグライダーや、ラジコンのグライダーが飛んでいたので、ゆっくり眺める。

沙若は、すごくはしゃいでいる。まだ元気はあるようだ。

しばらくして時計を見ると、4時くらいになっている。これ以上はゆっくりしていられない。

沙若に「暗くなる前にキャンプ場に行こう」と少々せかし、出発する。

R212をさらに熊本方面に走り、今度はR57を一の宮方面に走る。R57に入ってすぐに沙若が眠たそうになっているのに気付く。

少し休憩して「あと少しだから、がんばろう」と励まし、また走り出す。R57からR265に移り、高森方面へと進む。

沙若はとても眠そうだ。

箱石峠では、何回も止まり、しまいには左手で沙若を押さえて、クラッチを握らずにギヤチェンジをして走っていった。

なんとかPM5:30に鍋の平キャンプ場に到着する。空はまだ明るい。

受付に行くが管理人は留守の様子。

キャンプ場には家族連れのキャンパーが2組と、明日は登山に行くのだろうか、バイク乗りではなさそうなキャンパーが数人いた。

そして俺たちと同じツーリングキャンプのライダーが2組いるようだ。

とりあえず沙若と素早くテントを建てる。建て終わったら、辺りは薄暗くなってきた。今度は食料調達だ。

ここから5kmほど先のスーパーまで買い物に行く。

結局、沙若が食べたいと言ったものは、カップヌードルと刺身(鰹のたたき、甘海老)とウインナーだった。

それと明日の朝食用にロールパンとチーズも買う。

買い物を済まし帰って来ると、もう真っ暗だ。すぐお湯を沸かし食事をする。

こんな物でも、このシチュエーションで娘と食べると非常においしい。少し寒くなってきたのでコップにお湯を入れて飲む。

ただのお湯もおいしいものだ。

空には満天の星が輝く。

こういう夜は、また違う意味で贅沢だと感じられる。

簡単な食事を済ませて、食事の後片付けをしにテントを離れる。流し場で、1人のツーリングライダーと話しこむ。

彼は神奈川県から一週間の休みを取って九州に来たと言う。彼の愛車はヤマハXJ400、ミドルネイキッドだ。

九州までは高速を使って来たが、途中スピードオーバーで切符を切られ、高速代と合わせると高い交通費になったと ぼやく。

九州では、鹿児島の知覧に行き、旧陸軍の特攻記念館で涙してきたそうだ。

俺も去年行ってきたのだが、彼と同じように深い感動、感慨を受けてきた。

彼に明日の予定を聞くと、延岡に親戚の家に行くと言う。今度は反対に聞かれ、俺は阿蘇火口に行くつもりだと告げる。

彼は、そこはどんな所だと尋ねてくる。

熊本の阿蘇火口は、全国的にも有名な観光名所であり、時間もここからなら1時間もかからないと教える。

彼はしばらく考えた後、せっかくなので延岡とは反対方向だが、行くことにすると言う。

PM10時近くまで、話し込んだ後、テントに戻ると、沙若は完全に眠っていた。

パジャマ替りに厚手の上下スエットを持って来たのだが、結局着替えさせずに寝袋に潜り込ませた。

俺は寝床を整理した後、着替えて寝袋に潜り込んだ。

秋の夜長で、いろんな思いが頭の中を駆け巡る。

常々思っている事だが、ライダーはバイクに乗っているというだけで、ずっと以前から知っていたかのように、お互いを話し合う。

特にキャンプ場などでは、昼間と違い後は寝るだけなので、夜の長い時間を使っていろいろな話をする。

これまでも、こうやって知り合った人達と、手紙のやり取りは続いている。

車では得られない楽しさがあり、キャンプ・ツーリングの最大の楽しみではないかと思う。

今回も、彼と名刺の交換をして連絡先を聞いた。

今はパソコンで簡単に写真付きの葉書が出来るので、帰ったら自分達の写真を付けた葉書を送ろうと思った。

夏用の寝袋だが、防寒用に買った寝袋カバーと一緒に使ったら、

寒さも感じられず朝までぐっすり眠る事ができた。

 

2001924日(月曜日)晴れ

 

 

翌朝、俺も沙若もAM6:30に目が覚めた。

ちょうど朝日が昇り出し、とても美しかったので、それをバックに写真を撮った。

その後、朝食の用意を2人でする事にした。

俺はお湯を沸かし、昨日の残りのウインナーをゆで、

沙若はロールパンの真ん中にナイフで切れ込みを入れる。

自宅ならば包丁とまな板を使うのだが、小型ナイフ1本のその作業がとても楽しそうだ。

沙若が切ったパンにチーズとゆでたウインナーを挟んでいく。

沙若お手製のサンドイッチ?が出来上がる。

一緒にインスタントのカップスープと食べる。バターもマーガリンも使っていない簡単な食事だ。でも2人とも、おいしく食べた。

 

沙若は食事が済むと、キャンプ場にある丸太で組んだ大きなブランコで遊びたいらしく、後片付けを俺に押し付け、一人で遊びに行った。

彼女にとっては、「お空のブランコ」で遊ぶ事が目的で、このキャンプ場に来たのだから仕方ないと、あきらめる。

片付けが済むと即出発なので、何も言わずに遊ばせる事にする。

俺は沙若がいない間に、テントをたたみ、荷物をまとめる。

ふっと顔を上げると、神奈川から来たあの彼は手際が良いのか、俺達と同じくらいの荷物を既に片付けていた。

俺に「今から阿蘇火口まで行って、それから延岡に行きます。もしかしたら帰りぐらいに会えるかもしれないですね」と言って、

さわやかに走り去っていった。

やっと荷物を片付け、バイクに積み込む事が出来た。

ふと、まだ顔も洗っていない事に気が付いた。洗面用具を取り出し、沙若を呼びに行く。

沙若はブランコで、もう友達になったのか、他所から来た女の子達と一緒に遊んでいた。

沙若は俺が近づくと気付いて、1人ずつ元気よく紹介してくれた。

沙若について思うのだが、こいつは物怖じせず、すぐに誰とでも友達になれる。勉強が出来るとか出来ないとかいう問題よりも、もっと凄い、人間として素晴らしい特性を持っていると感じさせられる。

せっかく友達になったので、もっと一緒に遊びたいのだろうが、なんとか言い聞かせて連れて行き、2人で顔を洗った後出発する事にした。

バイクの所まで行くと、それぞれアメリカンバイクで来た男女のカップルが荷物を積んでいた。

意外にも、北九州の八幡から来たそうで、今日はもう帰るだけだと言う。

女性も大きなバイクを運転していたが、取り回しが大変になると彼に手伝ってもらっていた。

男性と一緒なら、取り回しに心配な女性でも安心してツーリングを楽しめそうだ。

お互いに「気を付けて」と交わした後、彼らは走っていった。

俺達も準備が整い、予定より少し遅れたが、阿蘇火口に向けて出発する。

途中のコンビニでジュースを買いに寄ると、カワサキZRX1200に乗った中年のライダーと会った。

久留米在住のその人は、早朝からここまで走ってきたと言う。

やはり子連れツーリングは珍しいようで、何となく俺達が羨ましそうな様子だった。

そのライダーは、沙若に、しっかり掴まっていくよう言い、温かく見送ってくれた。

R265からR325、そして、県道111号線(阿蘇登山道)を火口に向かって走っていく。

天気も良く、走り登っていくと眼下に広がる景色が良く見える。

時々スピードダウンして沙若と景色を見る。

阿蘇山上まで行って駐車場を回るが、昨夜のXJ400は見当たらない。

火口までの有料道を走り、ここでも駐車場を回るがやはり見当たらない。

彼は、もう出た後のようだ。

バイクを止めた後、カメラを持って火口までの遊歩道を沙若と歩く。

午前中なのに結構観光客が多い。

火口からは白い煙が立ち昇っているが、風が火口に向かって吹いているので、硫黄の特有の臭いはしない。

以前きた時はあの臭いがきつく、むせるほどだったのだが…。

今日は比較的に過ごしやすいが、火口に来たという実感は薄い。

火口をバックに沙若の写真を何枚か撮る。

遊歩道を一周した後、沙若とバイクとを一緒に写真を撮ってみた。火口まで来たという記念だ。

俺たちが写真を撮っていると、広島からハーレで来た若者が、「自分も写真を撮ってもらえないか」と声をかけてきた。

若者は、今日は阿蘇周辺を走るのだが、今夜のキャンプ場はまだ探していないと言う。それならば…と、さっきまでいた鍋の平キャンプ場を教える。

写真も撮り、充分休憩も取れたので、阿蘇山を下りるべく出発する。

広大な阿蘇草千里を走り、阿蘇町に向かう。

R57に出たところで、KDXに給油する。

給油が済んで、県道11号線(やまなみハイウェイ)に進み、

瀬の本方面に向かう。

今日は温泉に入って帰ろうと、思っていたからだ。

やまなみに入ってすぐ、沙若が眠そうなのに気付き、路肩に止め休憩する。

眠気覚ましに、沙若にチョコレートやジュースを与える。

そのうちに沙若は、通り過ぎるライダーにピースサインを送ったりして、楽しんでいる。

ここで沙若に、お風呂と昼飯とどっちを先にするか、聞いてみた。

温泉が大好きな沙若はすぐに、「お風呂が先」と答えたので、黒川温泉まで行くことにする。

やまなみハイウェイを快調に走り、瀬の本のドライブインに到着する。そこで沙若はソフトクリームを食べた。

食べ終わったところで、黒川温泉に向け走り出す。

しばらく走り、黒川温泉に着く。

バイクを止め、スタンドをかけようとしたら、キャブレターからガソリンがこぼれているのに気が付く。

フェールコックをOFFにして一旦止めるが、またONにするとこぼれ出す。

ここで考えても、知識の無い俺ではどうすることも出来ない。

とりあえずOFFにして、風呂に入るが、気がかりだ。

温泉は、黒川温泉の外れにあり混浴もあるが、男女別々に内風呂、露天風呂がありそれぞれ一番奥が混浴となっている作りだ。

入浴料は大人500円、子供250円。沙若は一人で女性風呂に入っていった。昨日からの汚れを洗い流し、ゆっくり風呂につかる。

沙若も一人で汚れを洗い流せたようだ。

風呂から上がって、バイクのフェールコックを再びONにすると、またガソリンがこぼれ出した。どうしても止まらないようだ。

そのままエンジンをかけて出発する。これでは、燃費が全く分からない。

走りながら時々エンジンの下を見るとやはりガソリンはこぼれているようだ。

どうしても駄目な時は行き着けのバイク屋に電話して、対処法を聞いてみようと考える。

温泉を出たら昼飯を食べに、小国町に向かってR442を走り出す。

ふと沙若が眠そうにしているのに気が付き、バイクを歩道に止めて休憩する。

下を見ると、やはりガソリンはもれているようだ。走ってきた後に点々とガソリンがこぼれている。

携帯電話を取り出し、行き着けのバイク屋に状況を説明する。

キャブレターにゴミが入っているとこの様な現象が起こるようで、ドライバーの枝のほうで軽くコンコンと叩くと止まるとの事。

言われた通り車載工具を取り出し叩いてみるが止まらない。これはバイク屋に見てもらわなければ駄目だと、観念せざるをえない。

沙若はこの間に通りすがりのおばあちゃんとお孫さんと仲良くなっており、小さいお孫さんと遊んでいた。

おばあちゃんは俺に、「子供を連れて危なくないか?」と聞いてくる。

実は息子さんが最近バイクの免許を取り、「将来はこの子を連れてツーリングに行く」と言っているそうだ。

バイクに乗らない人には理解し難い事なのだろう。俺のやっている事は、バイクに乗っている人(こちら側の人)には、きっと羨ましく見え、乗っていない人(あちら側の人)には、理解しがたい行動に見えるのだろうと、改めて思わされた。

長い休憩の後、ここにいる“あちら側”の人達に見送られ出発した。

予定では小国のそば街道で、そばを食べるつもりだった。しかし時間が遅くなっており、R212のドライブインで昼食を摂る事にする。

ドライブインに着きバイクを止めるとキャブレターから漏れていたガソリンが止まっていた。どうも先ほどのコンコンが効果を表したようだ。これでガソリン漏れの心配が無くなった。

沙若も俺も、またうどんとそばを注文する。

沙若は山菜うどんを注文したのだがキノコ類が苦手で、キノコは俺がほとんど食べた。

食事を済まし隣接の土産物コーナーを見るが、特に気の利いたものが無く、荷物にもなるので買わずに出発することにした。

しばらく走ったところで、ガソリンがどれだけ漏れたのか分からないので、不安になる。そこで、昨日給油したスタンドに立ち寄ってみる。

昨日の店員が「今から、帰りですか?」と声をかけてくれる。

ガソリン漏れの事を話すと、「中古車で、ガソリンを入れっぱなしにして長く置いておくとガソリンの色素が沈着して、

その様な現象を起こす事がある」と教えてくれる。

ここまできたら、もう給油しないで帰れる距離だ。あとは沙若の睡魔が帰宅時間を左右する。

沙若に「がんばって、行こう」と励まし出発する。

しかし、沙若の睡魔は最高潮に達しているようで、7〜8km走る度に休憩をするはめになった。

これでは、いつになったら帰れるのか分からない。

杖立を抜けたところで、眠気醒まし用にガムを買う。

沙若にガムを噛ませて眠気を紛らわすが、睡魔が強力なようで、ガムくらいではびくともしない。

今度は、「とっとこ、ハム太郎」「おじゃ魔女、ドレミ」など知っている歌を 大きな声で歌わす。

それでもやはり7〜8kmごとの休憩は必要になった。

日田まで来て、自宅に電話をする。

7〜8km毎に休憩が必要なので、帰宅時間がかなり遅くなる…と伝えた。

R212から県道671号線(大鶴熊取線)に進み、R211宝珠山に向かう。

R211に入ってすぐ、また休憩をとる。その時、携帯に嫁さんから電話がはいった。

「沙若が眠くて帰れないのなら、車で迎えに来ようか?」と言う。

しかしここまでがんばってきて、最後は車では俺の気持ちの中でツーリングキャンプが成り立たなくなる。沙若も後になって達成感が感じられなくなる、と思い

「最後までオートバイで連れて帰る」と断る。

沙若に「小石原まで行って、アイスクリームを食べよう」と言って走り出す。

小石原までは、沙若も眠そうだったが良くがんばってくれて、

快調に走る事ができた。

小石原の道の駅に着いたのは夕方6時になっていた。

そろそろ日も暮れかけてきて肌寒くなってくる頃だ。バックから、トレーナーを取り出し沙若に着せる。

眠気覚ましに、約束どおりアイスクリームを買う。

食べている時は全く眠くないようだが、走り出すとまた寝てしまうのは確実だろう。

考えたあげく最後の手段として、「何かの時に役に立つかも…」と用意していたキャンプ用のロープを取り出し、これで沙若を背負う事にした。

アイスクリームを食べ終わった時は、完全に日が落ちてしまい気温も下がってきていた。

ロープで沙若をしっかりと縛り付け、自宅に向けて走り出す。

案の定、沙若はすぐに睡魔に襲われてしまった。俺の背中で体が左右にフラフラしているのが分かる。

しかしロープの威力は凄いもので、走行に支障はない。

JR添田駅まで走りロープが緩んでいないか確認するが、問題はないようだ。

もっと早くからロープを使っていたら、沙若も俺も楽だったろうと思う。

途中2〜3回休憩を取りながら、ひたすら夜の暗い道を走る。

中間まで来た時には、沙若はすっかり目を醒ましていた。

信号待ちに後ろを向いて、「帰ったら元気に“ただいま”と言って家に入ろうね」と、沙若に声をかける。

中間を過ぎ、遠賀、水巻、とだんだん自宅に近づいている。

行き慣れた道のためか、沙若も元気が出ている。

午後8時前に自宅玄関前に到着した。

約束どおり、沙若は元気よく玄関の扉を開け「ただいま」と、嫁さんに飛びついていった。

俺は荷物を降ろしながら、いろんな思いが湧き上がるのを感じた。

KDXで、それも子連れでキャンプ・ツーリングができた、という達成感。

新しい相棒とのツーリングは、素晴らしく感動的なものだったと。

こいつを手に入れて正解だった。

今回のツーリングで、バイクというものは排気量に関係なく、俺達に感動を与えてくれるものだと気付かせてくれた。

この2日間は俺の中で輝いた記憶になる。

きっと沙若にとっても、感動的な意義ある2日間だったと確信している。

 

平成1392324日 桑っちょ&愛娘・沙若

 

by 桑っちょ

 

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